ゆかりのご飯巡りのお話
こんばんは、今日も雨ですね。雨だから筆をとるのか筆をとる日が偶々雨なのかわからないけど雨ですね。
前回の記事を書いた時は次はこれ〜みたいなのを書いたような気がするのですが、今日は気になっていたお菓子をやっと買えたのでそれのお話をしますね。上菓子やで、ハッピー。
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京都の丸太町駅から徒歩5分ぐらい?だったかな、松屋常磐さんの味噌松風です。
谷崎潤一郎が熱海へ移り住んだ後も京都からわざわざ取り寄せていたほど好きだったお菓子みたいで、ずっと食べてみたかったお菓子です。
味噌のお菓子……?と少し訝しんでいたのですが、西京味噌の甘塩っぱい風味と胡麻と生地のもちもちした食感がマッチしてなんともどっしり深い味わいでした。甘い物が苦手な方でも喜んでもらえそう。
江戸時代から続く老舗店で、御所も御用達だったというなかなかな泊付きのお菓子だけど大きいほうでも一箱1200円と割とお手頃価格です。もっとすると思ってた。
でも午前中で売り切れてしまうことも屡々あるそうで、電話予約が確実かもって聞いたのでしていきました。
女将さんが優しい方で、松風の切れ端も持たせていただきました。こっちもこっちで美味しい。パンの耳も美味しいよね。
雨だし遠出だし嫌だなあとしょぼしょぼ京都に来ていたのですが、良い買い物が出来てルンルンになりました。まだまだ残っているので暫くのお楽しみになりそうです。
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それからね去年ぐらいからかな、結構色んなゆかりのご飯を巡っているのでそれを振り返るお話もしますね。わたしが楽しいだけだしかなり雑な知識で話しますね。どこか不具合があったらコソッと教えてください。
一番古いものだと、奈良県明日香村でいただいた飛鳥鍋かな。すごく昔のことのようだけどまだ半年前だった気がする。
聖徳太子が好物だったらしい、和風シチューのような優しい味のお鍋でした。鶏肉のお出汁がよく出ていて美味しかったです。
その後は東京の近代文学館に併設されたカフェ文壇です。ちょうど夏目漱石や芥川龍之介達の特別展をしていたみたいで、夏目漱石が好きだったというホットチョコレートと芥川龍之介が好物だった無花果を使ったタルトを食べました。帰りに森鴎外の名を冠したマンデリンの珈琲豆も買ったはずなんだけど、写真が消えてた。残念。確かに少しほろ苦い所と風味豊かで甘い物に合いそうな感じが、個人的に鴎外先生っぽいな〜と思いました。
あと写真はないんですが、電氣ブランを舐めたりもしました。文明開化の味がした。
それから、大阪の難波で自由軒のライスカレーや善哉も食べました。
織田作之助がよく通っていた食堂らしく、店内の壁には織田作之助の写真が残っていました。善哉も織田作之助の『夫婦善哉』に因んだお店で、法善寺横丁とかの飲み屋帰りにひょいっと甘いものを啜って帰れる立地になっています。付け合せの塩昆布がめちゃめちゃ美味しいです。その法善寺横丁にはひっそりと彼の石碑もあったりするよ。ほんまひっそりだけど。
(お土産のキーホルダーもとっても可愛い)
1月には奈良のはり新というお店で古代食の御膳も食べました。イマイチピントが合っていないんですが、青い器に入っているのが古代チーズの蘇です。かの藤原道長が風邪で寝込んだ時に食べたい…って言っていた(平安時代の)高級品です。牛乳を確か三日三晩は煮込まないといけないみたいで、それはまあ手間と暇と人件費のかかったものだろうなと。もそっとした牛乳キャラメルというか、確かに蜂蜜をかけて蘇蜜にした方が食べやすいかな?という感じはしました。
あと北原白秋のお誕生日には、彼のお姉さんが嫁いだという酒蔵の菊美人を取り寄せました。奮発して大吟醸だよ。ラベルの文字も白秋が書いたもので、タグにもブーツを履いた白秋の写真がプリントされていました。可愛い。
なかなか他の地域のお店では見たことがないけど、カステラにめちゃめちゃ合うので是非御賞味いただきたいです。本当に幸せな味がする……。
北原白秋の詩集『桐の花』も、初版復刻版があったのであわせて購入しました。天金加工できらきらしているし、中の白秋の書いた挿絵も可愛いし印刷も当時の雰囲気があって眺めているだけでとても楽しいです。初版なので、ちゃんと〈ふさぎの虫〉も収録されています。
確か姦通罪の末に結ばれた女性と別れてしまった時の散文だったと思うのですが、なかなかこう、そのページまでの美しくて官能的な雰囲気と一変して泥々と陰鬱な雰囲気をしています。でもこちらも人間臭くて好き。
そこからやっと気持ちを整理することが出来て、その事を取り上げた詩集を女性に贈ったときに添えられた手紙も好きだったなあ。
「幸に私はあなたをうつくしいものに芸術化することが出来る。凡ては美しい見果てぬ夢となつて了つた今日私はあなたを何処までも世に美しい哀しい女として印象させて置きたい。」(大正2年1月頃 俊子宛書簡より)っていうこの、自信がすごい…すき……。
最後。これは先月ですね。
志賀直哉の『城之崎にて』の舞台となった城崎温泉にも行きました。まあ普通に温泉で蟹食べたい〜っていう欲に塗れて行ったのですが、志賀直哉以外にもいろんな方が訪れていたようであちこちに文学碑が立ち並んでいました。
城崎温泉限定の、『城之崎にて』の豆本も可愛かったです。毎回版ごとに表紙の色が変わるらしく、集めたくなる仕様をしています。憎い。今回は志賀直哉が怪我の療養で三週間過ごした三木屋さんには泊まらなかったのですが、彼の過ごしたお部屋も残っているみたいなのでいつか泊まって見学に行きたいです。
(宿で食べた蟹のフルコースが美味の極みでした)
志賀直哉の『痴情』の中で女性の裸体を「蟹の鋏の中の肉」と例えたのがずっと残っていたので、ちょっとだけ意識をして食べてみましたがまだわたしには理解が及ばなかったです。残念。でも蟹のお刺身が、菊美人とカステラの食べ合わせに並ぶぐらいに美味しくてこっちも幸せでした。は〜〜〜しあわせ〜〜〜わたしも三週間療養しよう〜〜〜〜って、目尻が緩んだというか頬とともに蕩け落ちた。
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こうして見ると、割と半年間で(主に関西圏だけだけど)色々食べに行ったなあと。今気付きましたけど、わたしは聖地巡礼が楽しめるタイプみたいでした。今気付いた。
次に食べてみたいのは、坂口安吾が好きだったというあんこう鍋と新潟のお酒です。でも季節的にもう遅いかな。それに福岡の菊美人酒造には北原白秋の原稿やらゆかりの品が飾られているそうなので、そちらも行ってみたいな。
あと勝手にわたしが関連づけたのもあるけど、京都の十三やのつげ櫛もずっと欲しいです。織田昭子さんの『わたしの織田作之助』で、織田さんの髪を解いていたのもここだったね。欲しいです(単純)
わたしが時たま創作したくなった時に主に五感を中心にした描写を入れることが多いので、こうして自分で味わって起きたくなるのかもしれません。単純に同じ空気感を味わって、同じものを食べてみたいという欲にも寄るけど……これからもあちこち飛び回ることが多そうなので、また何か食べてみたいと思います。今日はこれにて。長かった。
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